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ベトナムの恒久的施設(PE)のリスク、グローバル企業は恒久的施設の取り扱いに注意が必要

昨今、グローバル化の傾向により、多くの企業が広範囲に渡り事業活動を行っています。

ベトナムへも多くの国から投資が拡大し、さまざまな新しい事業が生まれています。

しかしながら、ベトナムを母国としない外国人にとっては、ベトナムにおける事業・進出は、税務上の更なるリスクを負うことになります。特に、ベトナムで法人を設立せず、事業を進めている場合は、恒久的施設の取り扱いが問題となることが多々あります。

今回は、その恒久的施設についてご紹介します。

恒久的施設(PE)の取り扱いが、グローバル企業で重要な背景

多くの国における税務当局は、経済協力開発機構による税源浸食と利益転換(BEPS)が発表されて以来、恒久的施設(PE)に関連する問題に注目し、積極的な政策を進めています。世界的な企業が、日々の事業プロセスの中で直面するであろう一般的な税務上のリスクは、例えば恒久的施設など、意図しないで課税対象の項目が増えてしまうことです。

投資国における恒久的施設の取り扱いを十分に理解していないことで、思わぬ重加算税、追徴という罰則に直面することも珍しいことではありません。海外への事業展開の末に、予期せぬ損失を抱え、かえって進出のデメリットの方が大きくなってしまったということもあり得ます。

そのため、グローバルで事業展開をする上で、事業を進める前から恒久的施設を理解することが重要です。

ベトナムの恒久的施設(PE)とは?

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恒久的施設は、国内法の適用、各国が締結した関連する租税条約、最近発表されたBEPSの方針によって決定されます。現在のベトナムの規制は、外国企業の事業活動がベトナムのPEを構成するかどうかを識別するために、次の3つの条件を規定しています。

ベトナムの恒久的施設 ①:支店、工場、拠点

支店、工場、天然資源の採掘場所、建設現場、組立作業場、サービスを提供する施設、代理店、代理店、建物、車両、機械または機器、マネジメントシステムを有する場所

ベトナムの恒久的施設 ②:定着した事業拠点

定着したという定義は、必ずしもそのような施設が特定の時間、特定の場所に配置される必要があることを意味するわけではありません。これは、ベトナムの指定された場所で設立され、恒久的に維持されていることを意味します。

ベトナムの恒久的施設 ③:代理PE

ベトナムでの事業活動は、母国の外国企業のコントロールの下、部分的・全体的・代理として行われます。

ベトナムにおける恒久的施設の定義は、租税条約の下で示される恒久的施設の定義とに、異なる規定がある場合には、国内の規制よりも租税条約が優先されます。

恒久的施設の取扱いに注意が必要なケース

ベトナムの拠点において、実質的に事業を行っているケース

ベトナムの拠点において、発注書の管理、フォローアップ、外国の親会社の債務回収などの活動を担う場合が当てはまります。このような場合は、ベトナムの税務当局が恒久的施設に該当するかどうか、確認に訪れる場合があります。

ベトナムの商品の保管、配送を行い、実質的に取引事業と同じケース

外国企業は、以下の条件に基づいて、ベトナムでPEを保有しているとみなされます。

  • 商品の保管だけでなく、保税倉庫から顧客に商品を定期的に配送するために保税倉庫を維持しているケースは、取引活動の一部と見なされます。
  • ベトナムの保税倉庫で、在庫と配送の管理を担当する代表者が常駐しているケース。

ベトナムにおける駐在員事務所の運営のケース

潜在的なPEリスクは、外国企業のベトナムの駐在員事務所の運営でも発生します。

その理由は、駐在員事務所がベトナムで事業活動を行うことを許可されておらず、法律で規定されている機能に含まれないサポートサービスを実行する場合、税務当局は駐在員事務所の評価が見直され、実質的に恒久的施設とみなされる場合があります。

次の活動は、恒久的施設のリスクが上昇します。

  • 親会社から商品を購入する顧客にメンテナンスなどのサービス提供
  • ベトナムでの親会社を代わりとする販売促進、製品の発売活動

恒久的施設(PE)と租税条約における税務上の考え

恒久的施設の明確な定義、恒久的施設への課税、2か国からの二重課税の回避、排除((PEに起因する収益など)すを目的として、ベトナムは世界の約75か国と租税条約を締結しています。

ベトナムに恒久的施設を持つ外国企業が、母国の国内法の下で税金を支払った場合においても、ベトナムでは、当該所得に課税することがあると規定しています。ベトナムで要求される税額は、ベトナムの国内法に基づいて徴収されるものの、母国において外国税額控除が十分に受け入れれるとは限りません。

さらに、外国税額控除の条件が満たされていた場合でも、租税条約の条項が自動的に付与されることはなく、正しく申請書類を提出した上で、税務当局の評価が必要となります。

ベトナムの恒久的施設(PE)について、結論

ベトナムの恒久的施設の状況は、ケースによっては、多くの税負担となる場合があります。

さらに、母国がベトナムとの協定に署名していない場合、外国企業は恒久的施設に関連する所得について、二重に税金を負担しなければならない場合もあります。

恒久的施設に係る税務上のリスクの回避は、ベトナムへ進出する前には十分に理解する必要があります。現地の活動が親会社の代理・営利目的ではなく、準備・補助的機能として証明することは納税者の責任です。

恒久的施設に係る税務上のリスクが排除されたかどうか、ベトナム会計士を含む、国際的な会計事務所など、専門家へ相談されることをお勧めします。


鈴木 啓之(宅地建物取引士・簿記1級・英語 / 中国語)

宅地建物取引士。香港の日系最大手会計事務所を経て、ベトナムで独立創業。 ホーチミン現地で、仲間のベトナム人会計士たちと共に、日系企業をはじめ外資系企業に、不動産・会計・税務・監査と、ワンストップでサービスを提供。